みそ柏餅コレクション TOKYO 2021
※『デイリーポータルZ』の自由ポータルZにてもう一息を頂きました!
ここ数年「みそあんの柏餅」に夢中。他の和菓子にはない個性的なおいしさが魅力だ。
といっても、共感は少ないかもしれない。端午の節句(5月5日)に柏餅を食べるけど、みそ味には興味ないという人も多いのではないだろうか?
そこで今回は「みそ柏餅の入門ガイド」として12店のみそ柏餅を紹介したい。チョコの味がメーカーごとに微妙にちがうように、みそ柏餅の味もそれぞれなのだ。
東京のお店ばかりだが、他県に展開しているお店も多いので広く読んでもらえると幸いだ。
■みそ柏餅の魅力とは?
みそ柏餅の魅力はずばり、白あんと味噌による、甘さと塩気の絶妙なバランス。
バランスはお店によって変わるのでそこも面白さだ。みたらしと同じだと思えば、塩気も気にならない。食べなれると「うーむ……有りかも」と思えてくるのだ。
考えてみると、あんこの代わりにみそあんを使う和菓子はほとんどない。ファンとしてはそのレア度も魅力に感じられる。
■だが、みそ柏餅のシーズンはあまりにも短い
みそはべつの意味でもレア。販売期間がふつうの柏餅より短いのだ(お店にもよる)。
「みそは来週からなんですよね」と言われることも何度かあったし、終わるのもはやい。亀屋万年堂のパンフレットにはこう書かれている。
恵方巻ほどではないが、それだけ限られた期間にしか食べない和菓子ということだろう。そんなみそ柏餅が買える、以下12のお店を紹介していきたい。
① 亀屋万年堂 (三鷹市・武蔵境駅)
② 和菓子ささき (調布市・つつじヶ丘駅)
③ 銀座 あけぼの (調布市・調布駅)
④ 浅草 梅園 (武蔵野市・吉祥寺駅)
⑤ 太子堂 (武蔵野市・吉祥寺駅)
⑥ 仙太郎 (新宿区・新宿駅)
⑦ シャトレーゼ (西東京市・田無駅)
⑧ 青木屋 (三鷹市・武蔵境駅)
⑨ 亀乃子本舗 (調布市・国領駅)
⑩ 京右近 (武蔵野市・吉祥寺駅)
⑪ 虎屋 (武蔵野市・吉祥寺駅)
⑫ 三陽 (小金井市・武蔵小金井駅)
①亀屋万年堂(三鷹市・武蔵境駅)
まずは、上で紹介した亀屋万年堂から。「お菓子のホームラン王」ことナボナが有名だが(公式サイトのURLが「navona.co.jp」)、柏餅への想いも本気だ。
ほかの和菓子は本気じゃないのか!? なんて野暮は言わずに、のぼりをかき分け店内へ。すると、まだ午後1時なのにみそだけ売り切れ。みそ派の朝は早い……!
これぞニッチ商品あるあるで、少量生産ゆえに起こる悲劇。別の日の9時すぎに行ったらさすがに買えた。それがこちら。
それではひと口……うまっ。皮は薄いけどコシもある。みその風味と塩気がしっかりめで「これぞ!」という存在感。みそ柏餅がホームラン王をとる日も近いかもしれない。
全国に店舗展開しているが、柏餅は東京・神奈川の直販店のみでの販売。ご注意を。
②和菓子ささき(調布市・つつじヶ丘駅)
初日の亀屋万年堂に振られた足で、京王線・つつじヶ丘駅からすぐの「今木屋」に行ってみると、なんとみそあん売り切れ。2/2で売り切れなんてある!? インスタでみそ柏餅が話題なのだろうか?
あわてて今木屋の裏手にある「和菓子屋ささき」に行くと、あった! お客さんがつぎつぎ訪れる、近所にあるとうれしいお店だ。ポスターの「おみそあん」がいい。
ピンクの皮がかわいい。皮の色だが、明治38年発行のレシピ本『和洋菓子製造全書』にすでにピンク・黄色について書かれていて(P253)、べつにどっちでもいいそうだ。
味は塩気が弱めのやさしい甘さ。みその風味ひかえめで、みそ初心者に向いてると思う。駅から近くて値段も安く、店員さんも明るいしいいお店だ。
→食べログ
③銀座 あけぼの(調布市・調布駅)
「銀座あけぼの」で思わず声が出た。「みそあん嫌いがおどろいた」とポップをかかげ、みそ柏餅を大きくあつかっている。今までひっそり応援してきたファンのほうがおどろく扱いだ。こんなに自信たっぷりなみそ柏餅は初めて。
銀座を冠する名店にこうも言われると、いきなり石を持ち上げられたダンゴムシのようにオタオタしてしまう。とりあえず、みそあん嫌いがおどろく柏餅を食べてみよう。
塩気は弱いけど、みその風味はしっかり強めで不思議なおいしさ。ふつうは塩気と風味が比例するので、たしかに食べやすさにおどろくかも。かなりおいしい。
北は北海道から南は鹿児島まで店舗があるので、おどろきたい人はチェック!
④浅草 梅園(武蔵野市・吉祥寺)
あわぜんざいで有名な浅草「梅園」のアトレ吉祥寺店にやってきた。『孤独のグルメ』で井之頭五郎が豆かんを食べていた気がしたが、それは浅草の「梅むら」だった。
つやつやで手ざわりのいい柏餅だ。皮は薄くやわらかくて歯ごたえがすばらしく、高さがあるので噛む喜びがある。みその強さも適度に感じられる。これ好きだな……。
神奈川・埼玉・千葉にも店舗があるが、やはり浅草観光のお供が最高かもしれない。
⑤太子堂(武蔵野市・吉祥寺)
吉祥寺アトレ内の「とらや」で買おうと10時半に行ってみたら、「みそ柏餅が届くのが午後1時なんですよ」と言われてしまった。
午後だと売り切れ、午前は届かず。これな~んだ? ……みそ柏餅!!
思わずクイズにしてしまったが、本当に一筋縄ではいかない。そこで、同じアトレ内の「太子堂」で買うことにした。3個390円はかなり安い。
太子堂は大袋のお菓子などが気軽に買えるお店。この柏餅も安かったので、じつのところそこまで期待はしていなかったのだが、ひとくち食べてムムッ!? とうなった。
作りたてだからか、皮がやわらかすぎて唇でちぎれるほど! 食べられる赤ちゃんのほっぺと言えば伝わるだろうか(たとえがヤバい)。今年食べたなかで断トツ一番好き。
太子堂は東京・神奈川の駅ビルに広く出店している。近郊に住んでいるかたは、ぜひとも午前中に買って食べてみてほしい。
⑥仙太郎(新宿区・新宿駅)
京王百貨店に入っている「仙太郎」にやってきた。白みその本場・京都が本店の和菓子屋ということで期待が高まる。ん? なにか書かれたしおりが……。
予想外に刺激的なことが書かれていて面食らうが、昭和初期の名エッセイのような調子でなかなか読ませる。これが京都の粋というものか。
食べてみると、皮はむっちりむちむち。みそあんは固めでたっぷり入っていてうれしい。皮だけでも甘みがあって、みその塩気とバランスがいい。
新宿の伊勢丹店はすごい行列なので、こちらのほうが買いやすいはず。京都・大阪・愛知にも店舗があるので、寄れそうな人には食べてもらいたい。
⑦シャトレーゼ(西東京市・田無駅)
亀屋万年堂の買収で話題になった「シャトレーゼ」。ケーキのイメージがあるが和菓子もいろいろ売っている。柏餅はなんと4種類! こし餡、粒餡、よもぎ粒餡、味噌餡だ。
他店とくらべると一回り小さく、あんの量もすくなめ。ただ、味はバランスがとれていて食べやすくじゅうぶんな出来。42都道府県に展開している(5県だけ店舗なし)ので、街の和菓子屋さんに入りづらい人は頼ってみよう。
■ちょっと休憩
みそ柏餅めぐりは体力的に楽ではないが、新緑の季節で移動は気持ちがいい。その季節にあった和菓子が売られるものなんだなー……ボケー……。
⑧和菓子処 亀乃子本舗(調布市・国領駅)
京王線の国領駅前にある「和菓子処 亀乃子本舗」にやってきた。昭和23年創業で、全国カステラ品評会最高賞の長崎かすていらが名物だ。とんねるずの『食わず嫌い王決定戦』でどら焼きが紹介されたこともあるそう。
店頭の看板には「柏餅はじまりました!」のかわいいイラスト。公式Facebookによると、新入社員のフクちゃんによる絵だそうで、お店はしばらく安泰だ。
皮もみそあんも色がおだやか。皮は弾力があってツヤッとかわいい。みそは適度な強さで全体的にとてもバランスがいい。みそあん好きから初心者まで楽しめるはず。手土産にもよさそうだ。
⑨菓子匠 京右近(武蔵野市・吉祥寺駅)
中央線・吉祥寺で人気の和菓子屋「菓子匠 京右近」を訪れた。人気があるとどうなるか? みそ柏餅が売り切れる(昼の12時に)。
こんなにみそ柏餅の入手に苦戦しているのは僕だけだと思うが、推しているマイナー商品が品薄なのはうれしくもある。翌朝10時に再訪して手にいれた。
ちなみに、この記事のために自転車をこぎにこいで色んな和菓子屋に行ったが、走行距離は100kmを超えているはず。
なるほどうまい。皮は薄く上品ながら食感はむっちり。みそはやや強めで塩気もあるが、かなりおいしいと思う。みそ柏餅ファンにすすめたい。来店はくれぐれも早い時間に!
→食べログ
⑩吉祥寺 虎屋(武蔵野市・吉祥寺駅)
70年以上の歴史をほこる「吉祥寺 虎屋」(「とらや」とは別)に行くと、「あと10分くらいで用意できると思います」とのこと。そうですかとお店を離れると、台車で柏餅を運ぶおばあちゃんとすれちがった。いい姿を見た。
おいしいなぁ。ここはとくに皮に特徴があって、写真では伝わらないほどピンクが淡い。そして舌ざわりがものすごくなめらかで、食べていて楽しい。高さがあるのであんの量も十分。みその風味はおだやか。一度は食べてほしい味だ。
→食べログ
⑪青木屋(三鷹市・武蔵境)
つぎは東京の多摩エリア(西の半分)に広くチェーン展開する「青木屋」。外から見える柏餅のポスターには「時間と共に固くなるのが、まじりっけなしの証です。」の一文が。
開店してすぐの9時半に行ったら、「作りたてですよ!」と店員さんがまじりっけなしの笑顔で渡してくれた。よし、すぐ帰ってすぐ食べよう。
いやはやうまい。まじりっけのない皮のおかげか、作りたてのおかげかは分からないが、厚めの皮がとてもおいしい。みその風味は強めで甘さひかえめ。みそ柏餅としては上級者向けな気もするが、柏餅としてすごくいい。東京西部にお住いの方はぜひ!
⑫三陽(小金井市・武蔵小金井駅)
最後は「三陽」。一見するとふつうの和菓子屋だが、『anan』の「夏のおとりよせ大賞」で、麩まんじゅうが満場一致のグランプリを獲得したこともある隠れた名店だ。
それを知らずに麩まんじゅうを買い、その次元のちがう美味しさにうなり、検索してみて深く納得した経験がある。そんなお店のみそ柏餅、気になる。
皮とあんの固さのバランスが絶妙で、口の中でどちらかが先になくなるということがない。こういう、高さがあってあんも多めな柏餅が好きなのかもしれない。
初心者からファンまで納得のおいしさ。中央線に乗る機会があれば思い出してほしい。
→食べログ
まとめ
個人店も大手和菓子屋もどこかしらにこだわりが感じられて、やっぱり面白くておいしい和菓子だとあらためて思った。作りたてほど最高なので午前中に食べて「新鮮な和菓子」を感じてみてほしい。
いちおう分布図を用意。ピンクゾーンはクセが弱くて初めての人でも食べやすいと思う。左上の「銀座あけぼの」は、みそあん嫌いがおどろいた味なので挑戦も有りだ。
せっかくのGWだというのに遠出もしづらいご時世。今年はちかくの和菓子屋でみそ柏餅に挑戦してみてはどうだろうか?
END