令和3年、ピザパンはどうなっているのか?
※『デイリーポータルZ』の自由ポータルZにてもう一息を頂きました!
ピザパンのことを最後に考えたのはいつだろうか?
ピザではないしピザトーストでもない、スーパーやコンビニに売られている総菜パンだ。最近、このピザパンの存在感が薄すぎやしないだろうか?
今回この、派手なようで地味なピザパンの現状にせまってみた。
半額でも買わなかったピザパン
ある日の夜、近くのスーパーに行ってみると運よく「半額祭り 」が開催中ではないか。
この祭りで踊るのは胸。はやる気持ちで店内を見わたすと、パンコーナーもアツそうだ。そう思って近づくと、シールが貼られたピザパンが目に止まった。
ピザパン……か、なつかしいな。高校の部活帰りとかに何度も食べたっけ。
このとき感じた愛おしさに嘘はない。だが結局、半額のピザパンは買わなかった。大人になりすぎた僕にはあまり魅力的に見えなかったのだ。
同じくベテランのカレーパンは、テレビで特集されるほどの発展と多様化を見せている。ピザの進化もご存じのとおり。本格的で美味しいピザが手軽に食べられるようになった。
ではピザパンは? 平成・令和にかけてほとんど変化がないまま「ピザの下位互換」というポジションにおさまっているのではないか? ピザパンの今を調べてみよう。
焼きたてピザが評判なスーパー「OKストア」のピザパン事情
最初に訪れたのは、ピザと言えば……で思い浮かんだOKストア。お店に入った瞬間、タイミングが良いのか悪いのか「絶品ピザが焼きあがりました~!」という魅惑の店内放送。
この熱々ピザを手放して、冷めたピザパンを探せというのか。ジローラモなら即帰国するレベルの苦行だがここはグッと我慢。
というか、こんな立派なピザがあるならピザパンは無いのでは? そう思ってパンコーナーを見てみると、なんといきなり知らない顔がいる。
『完熟トマトのピザパン』。パッケージの色は"スタバグリーン"でオシャレな印象だ。ん? よく見たらこっちもフジパン!? まさか一社で二種類も!(酔狂!)
とにかく食べてみよう。なお、食べ比べのため、このまえ買わなかった普通のピザパンも定価で買った。なにをしてるんだ僕は。
これらを食べた感想のまえに、他のピザパンを探してさまよった話を書いておこう。
コンビニのピザパンはどうなっているのか?
翌日さがしてみたのはコンビニのPB(プライベートブランド)ピザパンだ。パンはPBの中でも主力商品だと思うので期待できる。まずはセブンイレブンから行ってみよう。
「ピザパンは変化がないのでは?」と失礼なことを言ってしまったが、意外と新陳代謝があるのかもしれないぞ。他のコンビニも楽しみだ。
……と思ったが甘かった。見つからなかった話をダイジェストで紹介したい。
各コンビニ2軒ずつ探してみたが、セブンイレブン以外では見つけられないまま日も暮れてきた。ピザパンは暗くなってから探す食べ物ではない(個人の考えです)ので帰ろう。
他のスーパーでも探してみた
つぎは、OKストア以外のスーパーも探してみよう。ねらうはヤマザキやパスコ、第一パンなど製パン会社のピザパンだ。
……と思ったが、これまたすんなりとは見つからないのだった。ダイジェストだ。
『こんがりチーズトマトパン』……!?
パッケージには「ベーコン入りトマトフィリングを巻き込んで、チーズをトッピングしてこんがり焼き上げました」とある。それは四捨五入したらピザパンだろう。
捕まえたカナブンをカブトムシのメスだと言い張るような虚しさがあるがやむをえない。「四捨」で捨てたのはプライドだ。今日はこれだけでも買って帰ろう。
スーパーを探した結果は厳しく、置いてないか、あってもノーマルピザパン。ようやく買えたのはピザパンとは呼びづらい「こんがりチーズトマトパン」のみだった。
気を取りなおして、最後にパン屋をさがしてみよう。
不安と期待のパン屋は……惨敗
令和の今、パン屋で出すとしたらピザなのでは? そんな懸念があるが、探さないわけにはいくまい。どうかあってくれよ、と自転車のペダルに力をこめた。数日前までは冷めた目で見ていた僕だが、今はまちがいなく誰よりもピザパン、キミの味方なんだ。
……でも無かったのでダイジェストだ。
結果は惨敗。個人店などもまわったがピザパンは見つけられなかった。あくまで僕が見た範囲での話だが、本格的なピザを出すパン屋も多く、ピザパンにとって苦しい時代であることがうかがえた。
フジパンのピザパン2種を食べ比べてみた
あれやこれやと苦労もあったが、合計4つのピザパンが手に入った。それではフジパンの『完熟トマトのピザパン』と『(ノーマル)ピザパン』から食べてみよう。
こちらが『完熟トマトのピザパン』。全体に塗られたトマトソースが香ばしく匂う。中央のくぼみには生感のあるトマトソース。その上に多めのオニオンスライス。チーズの主張は少なめでハムなどの肉っ気はない。
そしてこちらがノーマルピザパン。やはり全体にトマトソースが塗られ、その上に少しのオニスラ。細切れではあるがソーセージも乗り、チーズの存在感もある。
それでは実食。モグモグ……。もう片方もモグモグ…………なるほどなるほど。
ノーマルのほうは、記憶にある味よりも美味しい気がする。チーズとトマトが相性よく、コクのある美味しさになっている。
完熟のほうは正直に言うと、すこし残念だった。常温で食べるとトマトソースや玉ねぎが冷たく感じられるのだ。
「常温勝負ならピザにも負けないぜ!」こそがピザパンの心意気だと思うが、本格路線に進化したことで、常温で活きる長所が減ってしまったのかもしれない。
せっかくなのでレビューをつけてみた。「ピザパン度」はピザともピザトーストとも違うピザパンらしさを評価した。
・味……………★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点
・温めた味……★★★★★★☆☆☆☆ 6点
・具の量………★★★★★★☆☆☆☆ 6点
・ピザパン度…★★★★★☆☆☆☆☆ 5点
コクやパンチがもうすこし欲しいかも。温めて食べたらトマトソースの風味がたって美味しくなった。
・味……………★★★★★★☆☆☆☆ 6点
・温めた味……★★★★★★★★☆☆ 8点
・具の量………★★★★★★☆☆☆☆ 6点
・ピザパン度…★★★★★★★★☆☆ 8点
予想より美味しい。トマト、チーズ、肉、玉ねぎとバランスも取れていてロングランの理由がわかる。
セブンイレブンのピザスティックはかなり美味しい!
こちらが『いろどり豊かなピザスティック』。トマトソースは厚塗り、チーズはぼってり固まるほどの量。具もベーコン、玉ねぎ、コーン、ピーマンとオールスター級だ。
生地はもっちりで味の濃さもバッチリ。温めるとチーズがとけてさらに美味しくなる。「ふかふかの生地、ピザっぽい具、濃いめの味」のこれはまさに、ピザパンに求めている味かもしれない。
・味……………★★★★★★★★☆☆ 8点
・温めた味……★★★★★★★★★★ 10点
・具の量………★★★★★★★★★☆ 9点
・ピザパン度…★★★★★★★★☆☆ 8点
近所のセブンイレブンでこれが買えるのはかなり嬉しい。ピザパンのひとつの正解か?
ヤマザキ製パンのこんがりチーズトマトパンもなかなか!
『こんがりチーズトマトパン』の見た目はデニッシュパン。中央にチーズが乗っていて、ここにだけピザパンを感じる。
ちぎると赤いピザフィリングが見える。これがいわゆるピザっぽい匂いで食欲をそそる。味は……うんうん悪くない。デニッシュ生地にコクがあって、ピザフィリングもなかなかパンチがある。「こんがり」はあまり感じられなくて残念。トースターで軽く焼いたら、生地がサクッとして◎。よし、キミは今日から正式にピザパンだ!!
・味……………★★★★★★★☆☆☆ 7点
・温めた味……★★★★★★★★★☆ 9点
・具の量………★★★★★★☆☆☆☆ 6点
・ピザパン度…★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点
ピザパン度が平均点を下げたが味は悪くない。具がリッチなバージョンも食べてみたい。
まとめ
結果的に、ピザパンに出会えたのは24店中6店だった。1/4というと、スウェーデンの高校教師が教員資格をもたない割合と同じじゃないか(なにと比べてるんだ)。
ライバルのカレーパンが全店で買えたのと比べるとさびしさはある。ただ検索してみると多くのメーカーがピザパンを作っているようで、今回は運が悪かったのかもしれない。
パン屋も、「東京のおすすめピザパン」などで美味しそうなピザパンが確認できる。
「平成・令和にかけてほとんど変化がない」なんてことはなかったのだ。新しいピザパンがいくつも生まれているし、しっかり美味しいものもある。そして、昔からあるピザパンの数十年売れ続ける偉大さよ。
次にピザパンを見かけたら、これまでとはちょっとだけ違う気持ちになりそうだ。買うかどうかはちょっとわからないけれども……。
END